氏名: | 永井 進(長野県) |
卒業年次: | 附属高・短大1990 |
所属団体: | (株)永井農場 |
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株)永井農場(長野県東御市)が第40回日本農業賞大賞を受賞。
2009年より株式会社化し、取締役社長 永井進氏は本学 附属高等学校、短期大学のOB。
ずっと同じ思いで
受賞の一報を聞き、これまでやってきたことが認められたのは良かったと思いました。決して条件に恵まれない中山間地で、農業法人として経営が成り立っていることが評価されたようです。それだけ補助金頼みの農家が多く、自立した農家はまだ少ないということでしょうね。
私が高校を卒業して農業を始めた頃、うちは本当に小さな農家でした。名家でもなければ土地があるわけでもない農家がどうすれば一人前の経営ができるか、最初の30年はずっとそのことだけを考えてきました。
米のほかに果樹や酪農をやり、生産だけでなく販売や加工を始めたのも、自分たちで食べていける自立した農家になるため。でもね、当時は、「農家は作物をつくればいい、売ることは仕事じゃない」と言われ、風当たりが強かったんですよ。
日本農業賞の応募書類には、自分たちの思いや取り組みを正直に書きました。日本の農業はどうすればいいかを問いかけるようなつもりでね。ずっと同じ思いで同じことをやり続けてきたにもかかわらず、かつて批判されていたことが評価されるようになったということは、時代が変わったんでしょうかね。
法人としての役割と責任
いまでは約150戸の地元農家から土地をお借りして米を作っています。皆さんの分まで農業をやるということですから、それだけの責任を負うことになります。自然に地域全体のことを考えるようになりますし、日本の農業や食料のあり方を無視できません。ここ20年は、日本の農業は誰が担うのか、食料を誰がつくるのか、真剣に考えざるを得なくなりました。農家が減少し続ける以上、新しい人材は欠かせませんし、そのためにも法人化して新規就農者を迎え入れる体制が必要でした。
農村特有の社会性を無視しては、農業は成り立ちません。国がかつてそうしたように、「単なる食料生産の担い手」を増やしてもだめ、その集落で担い手を育てなければ継続的な展開は望めないでしょう。自分の利益だけを求める人間に土地を貸したり協力したりするはずがありませんから途中でうまくいかなくなるはずですし、そもそも地域とのコミュニケーションがなければ農業をやっていても楽しくありませんからね。
消費者の皆さんに伝えるということも、農業法人の役目だと思います。農場のフリーペーパーやホームページ、食育や交流活動など様々な方法で情報を発信し農業の実情をお伝えしているのは、消費者と農家が別の方向を向いていては日本の農業が危ういと感じているからです。
うちは特別な技術や最新設備を導入した農場ではありませんが、それだけに環境的に恵まれなくても農業に真剣に取り組みたい人の参考になることがあるかもしれません。そういう意味でも、受賞は良かったなあ、という気持ちです。
農業を誇れる世の中に
農業をやっていると我慢強くなるよ、といつも言っています。自然が相手の仕事ですから、何事も他人のせいにはできません。農作業がきついから農業は大変だと誤解されがちですが、そうじゃない。一番大変なのは、自然相手ってことです。天候不順で米の出来が悪くても、牛が病気になっても、米や牛は悪くない。それを他人のせいにするようなら農業は成り立たない。言い訳したってだめ、最後は全て自分にくるんです。だから、忍耐力がついて我慢強くなるんですよ。
これからのことは若い人たちにお任せですが、自然や農業がもっと大事にされて、日本の食を支える人間が誇りを持てるような世の中になればいいなと思いますね。
個人的には、もともと農業が好きだし、やっていると楽しいですから、離れられないでしょう。身体が動く限りは農業をやっていたいですね。
(会長の父親 永井 忠氏 受賞談 HPより転載)